- 9月 2, 2026
2型糖尿病の飲み薬にはどんな種類がある?―それぞれの特徴をわかりやすく解説|内科・循環器内科
「糖尿病の薬は種類が多くて、違いがよくわからない」
診療の中で、このように感じている患者さんも少なくありません。
現在、2型糖尿病の治療にはさまざまな種類の飲み薬があります。それぞれ作用する場所や特徴が異なり、血糖値だけでなく、ご年齢、体格、腎臓や心臓の状態、他の持病の有無、低血糖の起こりやすさなどを考えながら、一人ひとりに合った治療薬を選択します。
今回は、2型糖尿病で使われる主な飲み薬についてご紹介します。
糖尿病治療の基本は「食事・運動+必要に応じた薬物療法」
2型糖尿病治療の基本となるのは、食事療法と運動療法です。
そのうえで、血糖値が目標まで十分に改善しない場合などには、飲み薬や注射薬による治療を行います。
糖尿病の薬は「血糖値が高いから全員同じ薬」というわけではありません。
日本人の2型糖尿病では、インスリンを分泌する力が低下している方もいれば、肥満などによってインスリンが効きにくくなっている方もいます。そのため、それぞれの病態に合わせて薬を選択することが大切です。
2型糖尿病で使用する主な飲み薬
① ビグアナイド薬
代表的な薬が「メトホルミン」です。
肝臓で新しく糖が作られるのを抑えたり、筋肉などでインスリンが効きやすくなるようにしたりして、血糖値を下げます。
単独では低血糖を起こしにくく、体重増加を起こしにくいことも特徴です。
一方で、腎機能や全身状態によっては使用できないことがあるため、定期的な検査が必要です。
② DPP-4阻害薬
食事をすると、小腸から「インクレチン」というホルモンが分泌され、食後に上がった血糖値に応じてインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる働きがあります。
インクレチンは「DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)」という酵素によって、比較的早く分解されてしまいます。DPP-4阻害薬は、このDPP-4の働きを抑えることでインクレチンを分解されにくくし、インクレチンの作用を長く保つ薬です。その結果、食後のインスリン分泌が促され、食後の血糖値を下げる働きが期待できます。
また、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑える効果もあります。
単独では低血糖を起こしにくく、日本では広く使用されている薬の一つです。
③ SGLT2阻害薬
腎臓で一度ろ過されたブドウ糖が血液中に戻るのを抑え、余分な糖を尿と一緒に体外へ排出する薬です。
血糖値を下げるだけでなく、体重や血圧が低下することもあります。
近年では、患者さんの状態によっては心不全や慢性腎臓病に対する効果も考慮して使用されるようになっています。
一方で、尿量が増えることによる脱水や、尿路・性器感染症などには注意が必要です。
④ SU(スルホニル尿素)薬
膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促す薬です。
血糖を下げる作用が比較的強い一方、低血糖や体重増加に注意する必要があります。
特に高齢の方などでは、低血糖を起こさないよう慎重に使用します。
⑤ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
食事の直前に服用し、食後に素早くインスリンを分泌させる薬です。
特に「食後の血糖値が高い」方に使用されることがあります。
服用後に食事をとらないと低血糖を起こす可能性があるため、基本的には食直前に服用します。
⑥ α-グルコシダーゼ阻害薬
腸管で糖質が分解・吸収されるスピードをゆっくりにすることで、食後の急激な血糖上昇を抑える薬です。
こちらも基本的には食事の直前に服用します。
副作用として、お腹の張りやガス、下痢などがみられることがあります。
⑦ チアゾリジン薬
脂肪や筋肉などでインスリンが効きやすくなるようにする薬です。
インスリンは分泌されているものの、十分に作用しにくい「インスリン抵抗性」が強い方などに使用することがあります。
むくみや体重増加などに注意が必要で、心臓の状態などを考慮して使用します。
⑧ 経口GLP-1受容体作動薬
GLP-1という消化管ホルモンの作用を利用する薬です。
血糖値に応じてインスリン分泌を促すほか、食欲を抑えたり、胃から食べ物が排出される速度をゆっくりにしたりする作用があります。
GLP-1受容体作動薬には注射薬もありますが、現在は飲み薬として使用できるものもあります。
服用方法に特徴があるため、正しい飲み方を守ることが重要です。
⑨ イメグリミン
イメグリミンは、膵臓からのインスリン分泌を促す作用と、肝臓や筋肉でのインスリンの効きやすさを改善する作用の両方をもつ薬です。
血糖値の状態に応じて使用され、単独では低血糖を起こしにくいことも特徴です。
副作用として、吐き気や下痢などの消化器症状がみられることがあります。
「どの薬が一番いい」というものではありません
糖尿病治療薬には、それぞれ得意なことと注意すべき点があります。
例えば、
- 血糖値をしっかり下げたい
- 食後血糖を改善したい
- 低血糖をできるだけ避けたい
- 体重増加を避けたい
- 心臓や腎臓の病気も考慮したい
- 高齢である
- 腎機能が低下している
など、患者さんによって治療で重視するポイントは異なります。
そのため、血糖値やHbA1cだけを見て薬を決めるのではなく、全身の状態や生活スタイルも含めて治療方法を考えていきます。
糖尿病の薬は自己判断で中止しないでください
「血糖値が良くなったから薬をやめても大丈夫かな?」
と思われることもあるかもしれません。
しかし、血糖値が改善しているのは薬が効いているため、という場合もあります。
自己判断で減量・中止すると再び血糖値が上昇することがあります。
反対に、食事や運動、体重の変化などによって薬を減らせる場合もあります。
薬の変更や中止については、必ず主治医と相談しましょう。
お一人おひとりに合わせた糖尿病治療を
2型糖尿病の治療薬には多くの選択肢があり、治療方法も以前より多様になっています。
大切なのは、「どの薬が新しいか」「どの薬が強いか」だけではなく、ご自身の身体の状態や生活に合った治療を続けていくことです。
当院では、血糖値やHbA1cだけでなく、体重、血圧、腎機能や肝機能の状態、心臓や脳をはじめとする他のご病気の有無なども確認しながら、患者さん一人ひとりに合わせた糖尿病治療をご提案しています。
治療を続けるにあたり、生活のご状況も考慮することが重要ですので、ライフスタイル、ご自身がご心配なさっている点などについても、お一人おひとりのご状況をお伺いしております。
糖尿病の治療や現在服用しているお薬について、気になることがありましたら、診察時にお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の治療内容や薬の選択は、患者さんの状態によって異なります。お薬には、上記以外にも注意点がありますので、ご不明な点は診察時にお気軽にご相談ください。