- 10月 13, 2026
健診で心電図異常を指摘されたら?「要再検査・要精査」の意味と必要な検査を循環器内科が解説
心電図異常=すぐに危険な心臓病、というわけではありません。一方で、心房細動、伝導障害、心筋虚血を疑う変化など、症状がなくても詳しく調べた方がよい所見もあります。
大切なのは、同じ検査を漫然と繰り返すのではなく、「どのような心電図異常だったのか」に応じて、ホルター心電図・心エコー・血液検査などを適切に選ぶことです。
この記事では、健診でよく指摘される心電図異常の意味、必要な再検査、受診のタイミングについて循環器内科の視点から分かりやすく解説します。
・健診の心電図異常だけで病名が確定するわけではありません。
・まず「実際の心電図波形」と「過去の心電図」を確認することが重要です。
・不整脈ならホルター心電図、心臓の構造異常が疑われれば心エコーなど、所見によって再検査は異なります。
・胸痛、失神、強い息苦しさなどを伴う場合は早急な受診が必要です。
健診の「心電図異常」とは?
心電図は、心臓が拍動するときに発生する電気信号を記録する検査です。脈の速さや規則性だけでなく、心臓内で電気が伝わる経路や、心筋に負担がかかっていないかを推測することができます。
ただし、健康診断で一般的に行われる安静時12誘導心電図は、数秒〜十数秒程度の心臓の状態を記録したものです。そのため、一時的な不整脈が偶然記録されることもあれば、逆に普段起きている不整脈が検査中には出ないこともあります。
また、体格、呼吸、自律神経の状態、電極の位置などによって波形が変化することもあります。
健診結果に書かれている「左室肥大」「ST-T異常」「期外収縮」などの名称だけで病気を判断するのではなく、実際の心電図波形を医師が確認することが重要です。
心電図異常を指摘されたら、まず確認したい3つのこと
「不整脈」「ST-T異常」だけでなく、心房細動、期外収縮、右脚ブロックなど具体的な記載を確認します。
動悸、胸痛、息切れ、めまい、失神などがある場合は、心電図所見の重要度が変わります。
以前から変わらないのか、今回初めて出現したのかは重要な情報です。
心電図異常ごとに、どんな再検査が必要?
すべての心電図異常に、すべての検査を行うわけではありません。代表的な所見と、一般的に検討される検査をまとめます。
| 健診での所見 | 考えられること | 検討される主な再検査 |
|---|---|---|
| 心房期外収縮
心室期外収縮 |
健康な人にもみられますが、頻度や連発の有無が重要です。 | 12誘導心電図、ホルター心電図、必要に応じ心エコー |
| 心房細動・心房粗動 | 脳梗塞や心不全との関連があり、無症状でも評価が必要です。 | 心電図、必要に応じホルター心電図、心エコー、血液検査、脳梗塞リスク評価 |
| 洞性徐脈 | スポーツ習慣などでもみられます。症状の有無が重要です。 | 心電図、薬剤確認、必要に応じ血液検査・ホルター心電図 |
| 房室ブロック | 程度によってはペースメーカー治療が必要になることがあります。 | 心電図、ホルター心電図、心エコー、血液検査。高度な場合は速やかな専門評価 |
| 右脚ブロック | 単独では大きな問題にならないケースも多い一方、新規出現や他の異常との併存では評価が必要です。 | 過去心電図との比較、必要に応じ心エコー |
| 左脚ブロック | 心筋症、虚血性心疾患などの器質的心疾患が隠れていないか確認します。 | 心エコー、必要に応じ虚血評価 |
| ST低下・T波異常 | 心筋虚血だけでなく、高血圧、心肥大、電解質異常などでもみられます。 | 心電図再検、必要に応じ心エコー、血液検査、冠動脈CTや負荷検査 |
| 左室肥大 | 高血圧などによる心臓への負担が背景にあることがあります。 | 血圧評価、必要に応じ心エコー |
| 異常Q波 | 過去の心筋梗塞などを疑うことがありますが、体格や電極位置による場合もあります。 | 心電図再検、心エコー、必要に応じ冠動脈評価 |
| QT延長 | 薬剤、電解質異常、遺伝性QT延長症候群などを確認します。 | 心電図再検、内服薬確認、血液検査、必要に応じ専門的な不整脈評価 |
| WPW型心電図・Brugada型心電図など | 一部では頻脈性不整脈や重篤な不整脈のリスク評価が必要になります。 | 循環器内科・不整脈専門医による追加評価 |
※上記は一般的な検査の例です。すべての方に記載の検査が必要になるわけではありません。また、症状や心電図所見によっては、通常の再検査より緊急評価が優先されます。
「期外収縮」と書かれていた場合
期外収縮は、予定より早いタイミングで心臓が収縮する不整脈です。心房から出る「心房期外収縮」と、心室から出る「心室期外収縮」があります。
少数の期外収縮は健康な方にもみられます。一方、頻回に起きている場合、連続して出現する場合、運動時に増える場合、失神・胸痛などを伴う場合には、詳しい評価が必要です。
健診心電図だけでは1日の期外収縮の回数は分からないため、必要に応じて24時間ホルター心電図などの長時間心電図で頻度を確認します。心室期外収縮が多い場合には、背景となる心疾患がないか心エコーを行うこともあります。
「心房細動」と書かれていた場合
心房細動は、無症状であっても放置せず、循環器内科で評価したい代表的な不整脈です。
心房細動では、心臓の中に血栓ができて脳梗塞を起こすリスクが高くなるため、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞の既往などから脳梗塞リスクを評価します。
必要に応じて、血栓をできにくくする抗凝固薬による治療や、脈拍・心房細動そのものをコントロールする治療を検討します。
また、心エコーで心臓の大きさ・収縮力・弁膜症の有無などを調べます。発作性心房細動では受診時の心電図が正常に戻っていることもあるため、ホルター心電図などを使用することがあります。
「ST-T異常」「ST低下」と書かれていた場合
「ST低下=狭心症」と決まるわけではありません。高血圧、心肥大、電解質異常、自律神経の影響などでもST-T変化がみられることがあります。
一方、運動時の胸痛・胸部圧迫感・息切れがある方や、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙歴など冠動脈疾患の危険因子が多い方では、心筋虚血の評価が必要になる場合があります。
症状やリスクに応じて、心エコー、冠動脈CT、負荷検査などを検討します。心電図の所見だけを理由に、すべての人に冠動脈CTや心臓カテーテル検査を行うわけではありません。
「右脚ブロック」「左脚ブロック」「房室ブロック」と書かれていた場合
これらは、心臓の中で電気信号が伝わる経路に関係する所見です。ただし、それぞれ意味が異なります。
右脚ブロックは、症状がなく心臓の病気も認めない場合には、経過観察になることがあります。一方、左脚ブロックでは背景に心臓の構造や収縮機能の異常がないか、心エコーで確認することが重要です。
房室ブロックは、心房から心室への電気信号の伝わり方が遅くなったり、途切れたりする状態です。軽度で経過観察できるものから、ペースメーカーが必要になるものまで幅があります。
特にMobitz II型2度房室ブロック、高度房室ブロック、完全房室ブロックでは、症状がなくても速やかな専門的評価が必要です。
心電図異常の再検査では何を調べる?
① 12誘導心電図をもう一度確認する
まず基本となるのが12誘導心電図です。健診時の波形と受診時の波形を比較し、「一時的な変化なのか」「以前から存在するのか」を確認します。
検査自体は短時間で終わり、痛みもありません。可能であれば健診で記録された心電図波形そのものを持参すると非常に参考になります。
② ホルター心電図・長時間心電図
胸に小型の電極を装着し、日常生活中の心電図を長時間記録する検査です。一般的な24時間ホルター心電図のほか、症状の頻度に合わせて、より長期間記録できる機器を使用する場合もあります。
・期外収縮がどの程度あるか知りたい
・動悸の原因を調べたい
・発作性心房細動が疑われる
・脈が極端に遅くなる時間帯がないか確認したい
・めまいや失神と不整脈の関連を調べたい
不整脈は「症状が起きたときの心電図」を記録できるかどうかが診断の大きなポイントです。そのため、症状が週に1回、月に1回などの場合には、24時間より長い記録が適していることもあります。
③ 心エコー(心臓超音波検査)
心エコーでは、心電図とは違い心臓の形と動きを直接確認します。超音波を使用するため放射線被ばくはなく、一般的には身体への負担が少ない検査です。
| 確認する項目 | 分かること |
|---|---|
| 心臓の収縮力 | 心不全・心筋症などの可能性 |
| 心臓の壁の厚さ | 高血圧性心疾患・肥大型心筋症など |
| 心臓の部屋の大きさ | 心房細動などの背景にある心臓の変化 |
| 心臓弁の状態 | 弁膜症の有無や程度 |
| 心臓の壁の動き | 心筋梗塞などに伴う局所的な収縮異常の可能性 |
特に左脚ブロック、頻回の心室期外収縮、心房細動、心肥大を疑う所見などでは、背景に器質的心疾患がないか確認するために心エコーが役立ちます。
④ 血液検査
不整脈や心電図変化の原因が、心臓そのものとは限りません。必要に応じて次のような項目を確認します。
・カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質
・甲状腺機能
・貧血
・腎機能
・血糖・HbA1c
・脂質
・必要に応じBNP/NT-proBNPなど
特にQT延長や不整脈では、薬剤や電解質異常が原因となっていないか確認することが重要です。
⑤ 運動負荷検査・冠動脈CTなど
「運動すると胸が痛い」「階段で息切れする」「ST-T異常を指摘された」などの場合には、冠動脈疾患の可能性を評価します。
検査の選択は、年齢、症状、心電図、腎機能、冠動脈疾患のリスクなどによって異なります。
必要性を判断したうえで、冠動脈CTや各種負荷検査などを検討します。検査によっては、対応できる医療機関への紹介が必要です。
こんな場合は健診結果を待たず、早めの受診を
心電図異常の多くは、通常の外来で落ち着いて評価することができます。ただし、症状や所見によっては早急な対応が必要です。
・強い胸痛、胸部圧迫感が続く
・突然の強い息苦しさ
・意識を失った、失神した
・冷汗、吐き気を伴う胸部症状
・激しい動悸とともに、めまい・失神・強い息苦しさがある
・急激に状態が悪化している
このような症状が現在ある場合には、自分で運転せず119番への連絡を検討してください。
・心房細動、心房粗動を初めて指摘された
・高度な徐脈を指摘された
・2度房室ブロックの一部、高度房室ブロック、完全房室ブロックを指摘された
・新たな左脚ブロックを指摘された
・QT延長を指摘され、失神歴や突然死の家族歴がある
・WPW型心電図やBrugada型心電図を指摘された
特に高度房室ブロックや完全房室ブロックなどでは、症状がなくても緊急の評価が必要になる場合があります。健診結果を受け取った段階で、医療機関へ連絡してください。
健診で心電図異常を指摘されてから診断までの流れ【模式図】
症状・既往歴・内服薬・家族歴も確認
12誘導心電図 / ホルター心電図 / 心エコー / 血液検査 / 必要に応じ虚血評価
※上図は一般的な診療の流れを示した模式図です。緊急性の高い症状・所見がある場合は、通常の検査手順より緊急評価を優先します。
健診の心電図異常についてよくある質問
Q1. 心電図異常があったら心臓病ということですか?
いいえ。心電図異常だけで心臓病と決まるわけではありません。健康な方にもみられる所見があります。一方で治療が必要な病気が隠れている場合もあるため、「どの異常だったのか」を確認することが重要です。
Q2. 自覚症状がなくても受診した方がいいですか?
「要再検査」「要精密検査」と判定されている場合は、症状がなくても一度確認することをおすすめします。心房細動などは無症状で見つかることもあります。
Q3. 再検査したら正常になることはありますか?
あります。一時的な期外収縮、自律神経の影響、電極の位置などによって健診時だけ異常にみえる場合があります。
ただし「再検査で正常だった=必ず問題なし」とも限りません。発作性不整脈などでは長時間心電図が必要になることがあります。
Q4. 心電図異常は何科を受診すればいいですか?
循環器内科が適しています。特に不整脈、房室ブロック、脚ブロック、ST-T異常、QT延長などを指摘された場合は、心電図の専門的な評価と必要な追加検査をまとめて検討できます。
Q5. 「要経過観察」なら放置して大丈夫ですか?
以前から変化のない軽微な所見であれば、定期健診での経過観察となることもあります。ただし、動悸、胸痛、息切れ、めまい、失神などが新たに出た場合は、次の健診まで待たずに受診してください。
Q6. 健診後は運動をやめた方がいいですか?
すべての心電図異常で運動禁止になるわけではありません。ただし、運動中の胸痛、失神、強い動悸がある場合や、重要な不整脈を指摘されている場合は、評価が終わるまで激しい運動を控えることが望ましい場合があります。
Q7. スマートウォッチの心電図で代用できますか?
スマートウォッチは心房細動などの不整脈を見つける手がかりになることがありますが、医療機関で行う12誘導心電図とは得られる情報が異なります。
健診で心電図異常を指摘された場合は、スマートウォッチだけで判断しないようにしましょう。
Q8. 血圧が高いだけでも心電図異常になりますか?
はい。高血圧が長期間続くと心臓の筋肉が厚くなり、「左室肥大」やST-T変化として心電図に現れることがあります。
この場合は血圧管理とともに、必要に応じて心エコーで実際の心臓の厚さや機能を確認します。
Q9. 心電図異常の再検査は、いつまでに受ければいいですか?
受診までの期間は、心電図所見と症状によって異なります。
緊急性の高い症状や高度な伝導障害がある場合は、当日中の評価が必要になることがあります。症状のない軽微な所見では通常外来での評価が可能な場合もあります。
「要精密検査」と判定された場合は、自己判断で何か月も先延ばしにせず、健診結果を医療機関に伝えて受診時期を相談してください。
健診で心電図異常を指摘されたら循環器内科へ
健診の心電図異常で大切なのは、単に「異常あり・なし」を確認することではなく、その異常が病気を意味するものなのか、今後どの程度注意すべきなのかを整理することです。
当院の内科・循環器内科では、健診結果、心電図波形、症状、血圧、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの背景を総合的に確認し、必要な検査や今後の対応を検討します。
心電図異常の種類によっては、長時間心電図や心エコーなどの追加検査、専門医療機関への紹介が必要になる場合もあります。
・今回の健康診断結果
・可能であれば健診時の心電図波形
・過去の健康診断結果・過去の心電図
・お薬手帳
・動悸や胸痛などがある場合は「いつ・どんな状況で起こるか」のメモ
「以前から指摘されているけれど、一度も詳しく調べたことがない」「健診で初めて心電図異常を指摘された」という方も、どうぞご相談ください。
院長からの一言
健診で心電図異常を指摘されると、「心臓に重大な病気があるのでは」と心配される方が少なくありません。しかし実際には、詳しく調べると治療の必要がない所見も多くあります。
一方で、心房細動のように症状がほとんどなくても将来の脳梗塞予防につながる病気や、追加検査によって初めて背景の心疾患が分かるケースもあります。
「異常と言われたから怖い」ではなく、「一度きちんと確認して、心配する必要があるものとないものを分ける」ことが大切です。健診結果や以前の心電図があれば、ぜひ受診時にお持ちください。
参考文献・参考資料
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf - 日本循環器学会/日本不整脈心電学会.2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf - 日本循環器学会.循環器病ガイドラインシリーズ.
https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/ - Kusumoto FM, et al. 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction Delay. Circulation. 2019.
American Heart Association:ガイドライン解説 - Joglar JA, et al. 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation. Circulation. 2024.
※本記事は2026年10月時点の医学的知見をもとに作成した一般的な医療情報です。個々の患者さんの診断や治療を行うものではありません。実際の対応は、心電図所見、症状、年齢、基礎疾患、内服薬などによって異なります。