• 10月 21, 2026

歩くとふくらはぎが痛い…閉塞性動脈硬化症(ASO)とは?ABI検査・治療・受診の目安

「歩くとふくらはぎが痛くなるけれど、少し休むとまた歩ける」「最近、片方の足だけ冷たい気がする」。こうした症状は、年齢や腰・膝のせいと思われがちですが、足の動脈が狭くなって血流が低下する「閉塞性動脈硬化症」が隠れていることがあります。

閉塞性動脈硬化症は足だけの病気ではありません。背景にある動脈硬化は、心臓や脳の血管にも起こるため、心筋梗塞や脳梗塞を予防するという視点も重要です。この記事では、症状の特徴、ABI検査、治療、何科を受診すべきか、緊急受診が必要な症状までわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 「歩くと痛い・休むと治る」は閉塞性動脈硬化症の代表的な症状です。
  • 診断の基本となる検査の一つが、腕と足首の血圧を比較するABIです。
  • 治療は「血流を良くする」だけでなく、禁煙、コレステロール・血圧・糖尿病の管理など全身の動脈硬化対策が重要です。
  • 安静時にも足が痛い、傷が治らない、足先が黒くなる場合は早めの専門的評価が必要です。
  • 突然、足が激しく痛み、冷たくなった場合は緊急疾患の可能性があります。

閉塞性動脈硬化症とは

閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)は、主に下肢の動脈に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり詰まったりすることで、足への血流が不足する病気です。

現在のガイドラインでは、下肢の動脈硬化性疾患を下肢動脈疾患(LEAD:lower extremity artery disease)と呼ぶことが多く、より広い概念として末梢動脈疾患(PAD:peripheral artery disease)という言葉も使われます。一般診療では「閉塞性動脈硬化症」「ASO」「PAD」と説明されることがあります。:chatgpt-content-reference{index=”0″}

閉塞性動脈硬化症が起こる流れ

喫煙・糖尿病
高血圧・脂質異常症など
→
動脈硬化が進む
→
足の動脈が狭窄・閉塞
→
筋肉や皮膚への
血流不足

特徴的な症状―「歩くと痛い、休むと治る」

代表的な症状が間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。一定の距離を歩くと、ふくらはぎなどが痛くなったり重くなったりして歩けなくなりますが、数分休むと改善し、再び歩けるようになります。

典型的な間欠性跛行

歩き始める
→
一定距離で
ふくらはぎが痛む
→
立ち止まって休む
→
数分で改善し
また歩ける

そのほか、次のような症状がみられます。

症状 特徴
足の冷え・左右差 片側の足だけ冷たい、皮膚の色が違うことがあります。
歩行時の痛み・だるさ 特にふくらはぎに多く、太ももや臀部に出ることもあります。
安静時の足の痛み 進行した血流障害の可能性があります。夜間や横になった時に痛むことがあります。
傷・潰瘍が治らない 足趾やかかとの傷が治りにくい場合は重症虚血を疑います。
足趾が黒くなる 壊死を起こしている可能性があり、速やかな専門診療が必要です。

一方、動脈が狭くなっていてもまったく症状がない人もいます。また、高齢者や腰痛・関節痛がある人では普段の歩行量自体が少ないため、症状が表面化しないことがあります。

腰部脊柱管狭窄症との違いは?

「歩くと足が痛い」という症状は、腰部脊柱管狭窄症でも起こります。症状だけでは区別しにくい場合もあり、ABIなどの検査が役立ちます。

特徴 閉塞性動脈硬化症 腰部脊柱管狭窄症など
きっかけ 一定距離の歩行 歩行・立位
楽になる方法 立ち止まるだけでも改善しやすい 前かがみや座ると改善しやすい
足の脈 弱いことがある 通常保たれる
ABI 低値となることがある 通常は正常

すぐ受診した方がよい症状

突然の強い症状は救急受診を考えてください

次のような症状が突然出た場合は、慢性的な閉塞性動脈硬化症ではなく、血栓などによって急に動脈が詰まる急性下肢虚血の可能性があります。

  • 突然、片方の足が激しく痛くなった
  • 足が急に白っぽくなった
  • 反対側に比べ明らかに冷たい
  • 足の脈が触れない
  • しびれ・感覚低下が急に出た
  • 足や足趾が動かしにくくなった

時間とともに神経や筋肉が障害される可能性があるため、様子を見続けず救急医療機関へ相談してください。2025年の国内ガイドラインでも、急性下肢虚血は迅速な診断と血行再建を要する病態として扱われています。

突然でなくても、早めに相談してほしい症状

  • 歩かなくても足が痛い
  • 夜間に足先が痛んで眠れない
  • 足をベッドから下ろすと痛みが楽になる
  • 足趾やかかとの傷が数週間たっても治らない
  • 足趾の色が紫色・黒色になってきた

閉塞性動脈硬化症になりやすい人

閉塞性動脈硬化症の主な原因は動脈硬化です。そのため、心筋梗塞や脳梗塞と危険因子の多くが共通します。

喫煙
非常に重要な危険因子です。
糖尿病
末梢の血管病変や足病変にも注意します。
高血圧
全身の動脈硬化を進めます。
脂質異常症
LDLコレステロール管理が重要です。
高齢
年齢とともに発症頻度が上がります。
慢性腎臓病・透析
重症化リスクにも関係します。

特に喫煙歴があり、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを複数持っている人で、歩行時の足の痛みや冷えがある場合は、一度血流を評価する意義があります。国内ガイドラインでも喫煙、糖尿病などは重要なリスク因子として示されています。

ABI検査とは?数値の見方

ABI(ankle-brachial index:足関節上腕血圧比)は、足首と腕の血圧を測り、その比率から足の動脈の血流低下を調べる検査です。採血や造影剤を必要とせず、比較的短時間で行える非侵襲的な検査です。

日本循環器学会・日本血管外科学会のガイドラインでは、安静時ABIを次のように分類しています。

ABI 評価 考え方
0.90以下 異常低値 下肢動脈の狭窄・閉塞を疑います。
0.91~0.99 境界域 症状があれば追加評価を検討します。
1.00~1.40 正常範囲 安静時ABIとしては正常範囲です。
1.40超 異常高値 血管の石灰化が強く、正確に測れていない可能性があります。

ABIが正常なら絶対に閉塞性動脈硬化症ではない、というわけではありません。症状が典型的なのに安静時ABIが正常の場合、運動後ABIなどを追加することがあります。また、糖尿病・慢性腎臓病などで動脈の石灰化が強い場合はABIが高く出ることがあり、TBI(足趾上腕血圧比)など別の検査を検討します。

どのような検査をする?

閉塞性動脈硬化症の診断では、「血流が悪いか」だけでなく、どの血管が、どの程度狭くなっているかを必要に応じて調べます。

検査 何がわかる? 特徴
診察・足の脈 左右差、皮膚の色、冷感、傷、脈の触れ方 診断の基本です。
ABI 足全体への血流低下 体への負担が少ない検査です。
血管エコー 血管の狭窄、血流速度、閉塞部位など 放射線被ばくがなく、繰り返し評価できます。
CT血管造影 血管の走行や狭窄・閉塞部位 血行再建を検討するときなどに有用です。造影剤を使う場合があります。
血液検査 LDLコレステロール、血糖、腎機能など 背景にある動脈硬化リスクを評価します。

診断の流れ【模式図】

歩行時の足の痛み・冷え・傷が治らない

↓

問診・足の診察・脈の確認

↓

ABIなどで血流を評価

↓

必要に応じて血管エコー・CTなど

↓

重症度に合わせて薬・運動療法・血行再建を検討

※実際には症状や腎機能、糖尿病、傷の有無などを含めて検査を選択します。

治療―薬・運動・カテーテル・手術

閉塞性動脈硬化症の治療には、①全身の動脈硬化を抑える治療、②歩行症状を改善する治療、③血流を直接回復させる治療があります。全員がすぐにカテーテル治療や手術を受けるわけではありません。

1.禁煙と生活習慣病の治療

最も基本になる治療です。特に喫煙している場合は禁煙が非常に重要です。また、LDLコレステロール、高血圧、糖尿病などを適切に管理します。

足の血流だけを治療して終わりではありません。
閉塞性動脈硬化症が見つかった時点で、全身の動脈硬化リスクを見直すことが重要です。

2.運動療法

間欠性跛行では、適切に管理された歩行を中心とする運動療法が症状や歩行能力の改善に有効です。海外の最新ガイドラインでも、監督下運動療法または構造化された運動プログラムはPAD治療の中核に位置づけられています。

一般的には「歩く → 痛みが出る → 休む → 改善したら再び歩く」という運動を繰り返しますが、運動量は患者さんごとに調整します。

注意:安静時痛、足潰瘍、壊疽などがある重症例では、自己判断で歩行運動を増やすのではなく、まず医療機関で血流を評価してください。

3.薬物療法

症候性のPADでは、心筋梗塞や脳梗塞などの予防を目的に抗血小板薬が用いられることがあります。また、スタチンなどによる脂質管理も重要です。

間欠性跛行の改善を目的としてシロスタゾールなどが使われる場合があります。ただし、シロスタゾールはうっ血性心不全の患者さんには禁忌であり、出血、動悸などにも注意が必要です。薬は合併症や他の薬との組み合わせを考えて選択します。

また、2025年の国内フォーカスアップデートでは、下肢血行再建後で出血リスクが低い患者に対する低用量リバーロキサバンとアスピリンの併用が選択肢として示されています。一方、出血リスクとのバランスが重要であり、すべてのPAD患者に一律に行う治療ではありません。

4.カテーテル治療・バイパス手術

生活習慣改善や薬物療法、運動療法を行っても日常生活に支障が大きい間欠性跛行や、安静時痛・治りにくい潰瘍・壊疽などの包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)では、血流を回復させる治療を検討します。

治療 概要
血管内治療(EVT) カテーテルを血管内に進め、バルーンやステントなどを用いて狭窄・閉塞部の血流を改善します。
バイパス手術 自分の静脈や人工血管などを使い、狭窄・閉塞部を迂回する新しい血流ルートを作ります。

どちらが適しているかは、病変の場所・長さ、足の傷の程度、年齢、全身状態、使用できる静脈などによって異なります。2025年国内ガイドラインでは、重症下肢虚血に対する血行再建について近年の臨床試験を踏まえた更新が行われています。

閉塞性動脈硬化症は「足だけの病気」ではありません

ここは非常に重要です。

閉塞性動脈硬化症の背景には全身の動脈硬化があります。そのため、足の動脈に病気が見つかった人では、冠動脈疾患や脳血管疾患を合併していることがあります。国内ガイドラインでも、LEAD患者は心筋梗塞、脳梗塞、突然死などの全身の血管イベントリスクが高いことが指摘されています。

動脈硬化は全身で起こります【模式図】

心臓
冠動脈疾患
心筋梗塞など
脳
脳梗塞
頸動脈疾患など
足
閉塞性動脈硬化症
PAD・LEAD

※動脈硬化が複数の血管領域に存在することを示した模式図です。

そのため治療の目標は、単に「足が歩きやすくなること」だけではありません。将来の心筋梗塞・脳梗塞を減らすことまで含めて管理する病気と考えることが大切です。

日常生活で気をつけること

  • 喫煙している場合は禁煙を最優先で考える
  • 血圧・LDLコレステロール・血糖値を適切に管理する
  • 医師の指示のもとで定期的な歩行運動を行う
  • 足に傷・水疱・靴ずれがないか確認する
  • 合わない靴を避ける
  • 糖尿病がある人は特に足の観察を習慣にする
  • 処方薬を自己判断で中止しない

特に糖尿病や血流障害が強い人では、小さな靴ずれや傷が治りにくく、感染を伴って悪化する場合があります。入浴時などに足趾の間や足裏まで確認するとよいでしょう。

閉塞性動脈硬化症についてよくある質問

Q1.閉塞性動脈硬化症は何科を受診すればよいですか?

まずは循環器内科、血管外科、またはかかりつけの内科で相談できます。歩行時の足の痛みがあり、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症などがある場合は、循環器系の評価も重要です。血行再建が必要な場合には血管外科やカテーテル治療を行う専門施設と連携します。

Q2.放置するとどうなりますか?

軽症のまま経過する人もいますが、放置してよい病気ではありません。歩行能力が低下することに加え、重症化すると安静時痛や潰瘍、壊疽につながることがあります。また、全身の動脈硬化のサインとして心筋梗塞・脳梗塞の予防も必要です。

Q3.ABIが0.9以下なら閉塞性動脈硬化症ですか?

ABI 0.90以下は下肢動脈の狭窄・閉塞を疑う重要な所見です。ただし、ABIだけで最終診断するのではなく、症状、診察所見、血管エコーなどと合わせて判断します。

Q4.ABIが正常でも病気のことはありますか?

あります。安静時には血流が保たれていて、歩いた時だけ血流不足が明らかになる場合があります。そのため、症状が典型的であれば運動後ABIなどを行うことがあります。

Q5.運動すると血管が詰まって危険ではありませんか?

安定した間欠性跛行では、適切な歩行運動は治療の一つです。ただし、安静時痛や足潰瘍、壊疽などがある場合には治療方針が異なります。自己判断ではなく、まず重症度を確認してください。

Q6.薬だけで治りますか?

病変そのものが完全に元通りになるとは限りませんが、薬物療法や運動療法で症状を改善し、心血管イベントを予防できる場合があります。症状が強い場合や重症虚血ではカテーテル治療・手術を検討します。

Q7.足が冷たいだけでも受診した方がよいですか?

冷えだけで閉塞性動脈硬化症と決まるわけではありません。ただし、左右差が大きい、歩行時の痛みがある、足の脈が弱い、糖尿病や喫煙歴がある場合には一度相談をおすすめします。

Q8.突然足が冷たくなった場合も同じ病気ですか?

突然の強い痛みや冷感、しびれ、麻痺を伴う場合は急性下肢虚血の可能性があり、慢性の閉塞性動脈硬化症とは緊急度が異なります。速やかに救急医療機関へ相談してください。

当院での診療について

「歩くとふくらはぎが痛む」「足の冷えに左右差がある」「健診で動脈硬化を指摘された」「糖尿病や高血圧があり足の血流が心配」といった場合は、内科・循環器内科でご相談いただけます。

問診や足の診察に加えて、血圧、コレステロール、糖尿病、腎機能など全身の動脈硬化リスクを総合的に評価し、必要に応じてABIなどの血流評価や追加検査を検討します。血管内治療や手術など専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介します。

こんなときは一度ご相談ください

  • 歩くと決まってふくらはぎが痛む
  • 休憩すると数分で痛みが改善する
  • 片側の足だけ冷たい
  • 足の脈が弱いと言われた
  • 喫煙歴があり、糖尿病・高血圧・脂質異常症もある
  • 足の傷がなかなか治らない

院長からの一言

閉塞性動脈硬化症でよくあるのが、「年齢のせいだと思っていた」「腰が悪いだけだと思っていた」というケースです。特に、歩くたびに同じような距離でふくらはぎが痛くなり、休むと改善する症状には注意が必要です。一方で、早い段階で見つかれば、すべての方がカテーテル治療や手術を必要とするわけではありません。足の症状をきっかけに、血圧・コレステロール・血糖・喫煙などを含めた全身の動脈硬化対策につなげることが大切です。

まとめ

  • 閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって足の血流が低下する病気です。
  • 「歩くとふくらはぎが痛み、休むと治る」という間欠性跛行が代表的です。
  • ABIは診断に役立つ基本的な検査で、0.90以下は異常低値です。
  • 治療では禁煙、脂質・血圧・糖尿病管理、運動療法、薬物療法が重要です。
  • 重症例ではカテーテル治療やバイパス手術を検討します。
  • 足だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞を含めた全身の動脈硬化管理が重要です。
  • 突然の強い足の痛み・冷感・しびれ・麻痺は救急受診が必要な場合があります。

参考文献・参考資料

  1. 日本循環器学会/日本血管外科学会.2025年JCS/JSVSガイドラインフォーカスアップデート版 末梢動脈疾患.2025.
  2. 日本循環器学会/日本血管外科学会.2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン.2022.
  3. Gornik HL, et al. 2024 ACC/AHA/AACVPR/APMA/ABC/SCAI/SVM/SVN/SVS/SIR/VESS Guideline for the Management of Lower Extremity Peripheral Artery Disease. Circulation. 2024.
  4. Mazzolai L, et al. 2024 ESC Guidelines for the management of peripheral arterial and aortic diseases. European Heart Journal. 2024.
  5. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA).シロスタゾール製剤 添付文書.2026年改訂版.

※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。症状、検査値、治療の適応は患者さんごとに異なります。実際の診断・治療については医療機関でご相談ください。

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