• 10月 13, 2026

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?いびき・高血圧との関係、検査からCPAP治療まで解説

最終更新:2026年10月12日

「家族から寝ている間に呼吸が止まっていると言われた」「いびきがひどい」「十分寝ているのに疲れが取れない」。こうした症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は単なるいびきの病気ではありません。高血圧や心房細動、心不全などとも関係します。この記事では、症状や原因、検査方法、AHIの基準、CPAP治療、受診の目安までわかりやすく解説します。

まず知っておきたいポイント

睡眠時無呼吸症候群は、肥満の方だけに起こる病気ではありません。また、昼間に眠気がなくても発症していることがあります。いびきや無呼吸を指摘された方、治りにくい高血圧や心房細動がある方は、一度検査を検討しましょう。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に呼吸が止まったり、浅くなったりする状態を繰り返す病気です。代表的なのは、舌やのどの組織によって空気の通り道がふさがれる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。

呼吸が止まるたびに体内の酸素が減り、脳が短時間覚醒して呼吸を再開します。この反応が何度も繰り返されるため、本人は十分眠ったつもりでも睡眠の質が低下してしまいます。

睡眠時無呼吸で起こること【模式図】

睡眠中に舌やのどの筋肉がゆるむ
↓
気道が狭くなる・呼吸が止まる
↓
酸素濃度低下・脳が短時間覚醒
↓
交感神経の活性化・血圧や心拍数への負担

主な症状|いびきだけではありません

睡眠中の症状 起床時・日中の症状
大きないびき
呼吸が止まる
息苦しくて目が覚める
夜間頻尿
何度も目が覚める
起床時の頭痛
口の渇き
日中の眠気
疲労感・集中力低下
熟睡感がない

特に家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と指摘された場合は、検査を考える重要なきっかけです。ただし日中の眠気がないからといって睡眠時無呼吸を否定することはできません。

原因と危険因子|痩せていても発症する?

睡眠時無呼吸は肥満と強く関係しますが、それだけで決まるわけではありません。顎が小さい、下顎が後ろに下がっている、扁桃が大きいなど、気道の構造も影響します。

要因 睡眠時無呼吸との関係
肥満 首やのどの周囲の脂肪で気道が狭くなります。
小さい顎・下顎後退 舌が後方に落ち込みやすくなります。
扁桃肥大・鼻づまり 空気の通り道が狭くなります。
飲酒・一部の睡眠薬 上気道の閉塞を悪化させる場合があります。
加齢 上気道を支える筋肉の働きなどが変化します。

日本人を含む東アジア人では、比較的肥満が軽くても顎顔面の形態などによってOSAを発症することがあります。

高血圧・心房細動・心不全との関係

睡眠時無呼吸では、低酸素、睡眠の分断、交感神経の活性化、胸腔内圧の変動などが繰り返されます。そのため、循環器疾患と深く関係しています。

高血圧

夜間・早朝の血圧上昇や、薬で下がりにくい高血圧と関係します。

心房細動

睡眠時無呼吸の合併が多く、心房細動の診療でも評価が重要です。

心不全

閉塞性だけでなく中枢性睡眠時無呼吸を伴うことがあります。

脳卒中・冠動脈疾患

睡眠時無呼吸との関連が報告されています。

CPAP治療は無呼吸、眠気、睡眠の質を改善し、血圧改善にも一定の効果が期待できます。ただし、CPAPによってすべての患者さんの心筋梗塞や脳卒中が確実に予防できると証明されているわけではありません。

AHIとは?重症度の基準

AHI(無呼吸低呼吸指数)は、睡眠1時間あたりに無呼吸と低呼吸が何回起こるかを示す指標です。

AHI 一般的な重症度
5未満 正常範囲
5以上15未満 軽症
15以上30未満 中等症
30以上 重症

この分類は一般的な成人の基準です。簡易検査では実際の睡眠時間を測定できないことがあり、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)のAHIと同一に解釈できない場合があります。また重症度の分類とCPAPの保険適用基準は同じではありません。

検査方法|簡易睡眠検査とPSG

睡眠時無呼吸が疑われる場合、まず自宅で行う簡易睡眠検査(PG)を検討します。診断が確定しない場合や、より詳しい評価が必要な場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。

項目 簡易検査(PG) 精密検査(PSG)
測定項目 呼吸・血中酸素飽和度など 脳波・呼吸・血中酸素飽和度・心電図など
特徴 自宅で行いやすい 睡眠時間・睡眠段階まで詳しく評価可能
注意点 無呼吸を過小評価する場合がある 装着するセンサーが多い
検査・治療の流れ【模式図】

いびき・無呼吸・眠気などで相談
↓
問診・診察
↓
自宅で簡易睡眠検査
↓
必要に応じてPSG精密検査
↓
結果に応じてCPAP・口腔内装置・生活習慣改善など

※患者さんの状態により検査順序は異なります。

治療方法|CPAPとは?

CPAP(持続陽圧呼吸療法)

CPAPは、鼻や口に装着したマスクから空気を送り、空気の圧力によって睡眠中の気道が閉じるのを防ぐ治療です。酸素を補充する治療とは異なります。

適切に使用すると無呼吸やいびき、低酸素が改善し、日中の眠気や生活の質の改善が期待できます。装着時の違和感、マスクからの空気漏れ、口や鼻の乾燥がある場合には、マスクや加湿設定などを調整します。

CPAPは何時間使用する?

原則として眠っている時間のできるだけ長い時間、毎晩使用することが大切です。4時間は研究や使用状況評価で用いられることがありますが、「4時間だけ使用すれば十分」という意味ではありません。

2026年度診療報酬改定では、在宅持続陽圧呼吸療法の保険診療に関する基準が見直され、PSGによるAHIが15以上であることなどが対象要件に含まれています。また一定の条件では簡易検査でのAHI30以上などが評価されます。実際の保険適用は、症状・検査方法・その他の要件を含めて判断されます。

口腔内装置(マウスピース)

下顎を前方に保持して気道を広げる方法です。軽症~中等症の方やCPAPが難しい方などに検討します。歯科での適切な評価と装置の調整が必要です。

体位療法

仰向けで無呼吸が増える方では、横向きに寝る方法が役立つ場合があります。特に体位依存性の睡眠時無呼吸で検討します。

手術・耳鼻咽喉科的治療

大きな扁桃や鼻閉、顎顔面の構造などが関係する場合、耳鼻咽喉科や口腔外科などの専門的治療が選択肢になります。

生活習慣で改善できること

対策 ポイント
減量 肥満がある場合は特に重要です。
運動 体重管理と循環器疾患予防につながります。
就寝前の飲酒を避ける 飲酒による気道閉塞の悪化を防ぎます。
横向きで眠る 体位依存性OSAで役立つ場合があります。
鼻づまりの改善 呼吸やCPAPの使用しやすさに役立ちます。

生活改善は重要ですが、中等症~重症の場合は、それだけで十分とは限りません。必要な治療と並行して取り組みましょう。

何科を受診する?病院へ行く目安

睡眠時無呼吸は内科、循環器内科、呼吸器内科、睡眠外来、耳鼻咽喉科などで相談できます。高血圧や心房細動、心不全がある方では、循環器疾患も含めて評価することが大切です。

救急受診が必要な症状

強い胸痛、突然の激しい呼吸困難、失神、片側の麻痺、ろれつが回らないなど。これらは睡眠時無呼吸の外来検査を待たずに119番などの救急対応が必要です。

早めに相談したいケース

運転中に眠くなる、無呼吸を繰り返し指摘される、血圧が治療しても下がりにくい、心房細動などがある場合。

通常の外来で相談できるケース

いびき、朝の頭痛、熟睡感のなさ、夜間頻尿などが続いている場合。

強い眠気があるときは自動車の運転や危険な機械の操作を避けてください。

よくある質問(FAQ)

Q1.いびきがあれば睡眠時無呼吸ですか?

いいえ。いびきだけでは診断できません。呼吸停止や強い眠気、関連疾患などがある場合は検査を検討します。

Q2.痩せていても睡眠時無呼吸になりますか?

なります。顎の形、舌、扁桃などの要因により、肥満がなくても発症することがあります。

Q3.自然に治りますか?

成人では自然に完全に治るとは限りません。減量や生活改善で軽くなる場合はありますが、重症度に応じた治療が重要です。

Q4.検査のために入院が必要ですか?

必ずしも必要ではありません。簡易検査は自宅で行えます。PSGも施設や機器によって在宅で実施する場合があります。

Q5.CPAPは一生必要ですか?

必ずしも一生とは限りません。ただし、使用を中止すると無呼吸が再発することが多く、減量や手術などで状態が変わった場合は再検査して判断します。

Q6.CPAPは1日何時間使えばよいですか?

眠っている間のできるだけ長い時間使用することが基本です。使用状況や症状を確認しながら調整します。

Q7.血圧が高いだけでも検査した方がよいですか?

特に薬で血圧が下がりにくい場合や、夜間・早朝に血圧が高い場合には検査を検討します。

Q8.心房細動がある場合も検査が必要ですか?

睡眠時無呼吸との合併が多いため、症状やリスクを踏まえて検査を検討する価値があります。

当院での睡眠時無呼吸の診療について

当院では、いびきや日中の眠気だけではなく、高血圧や不整脈などの循環器疾患との関係も踏まえて、睡眠時無呼吸の評価・診療を行います。必要な検査を検討し、結果に応じてCPAPを含む治療方針を相談します。精密検査や専門的治療が必要な場合には、適切な医療機関と連携します。

こんな方はご相談ください

・家族に呼吸停止を指摘された方
・大きないびきが続く方
・日中の眠気や朝の頭痛がある方
・高血圧の治療をしても血圧が下がりにくい方
・心房細動などの循環器疾患がある方

院長からの一言

睡眠時無呼吸の診療では、「昼間は眠くないので、自分には関係ないと思っていた」とお話しされる方が少なくありません。特に高血圧や心房細動などを診療していると、睡眠時無呼吸が隠れている可能性を考える場面があります。一方、いびきがあるだけで必ず治療が必要なわけではありません。まずは検査で状態を把握し、その方に必要な治療を一緒に考えることが大切です。CPAPを始める場合にも、無理なく継続できるよう、使い心地や使用状況を確認していきたいと考えています。

参考文献・参考資料

  1. 日本循環器学会.2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.公式ガイドライン
  2. 日本呼吸器学会.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020.
  3. 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し.改定資料
  4. Kapur VK, et al. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea. J Clin Sleep Med. 2017;13:479-504.
  5. Patil SP, et al. Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea with Positive Airway Pressure. J Clin Sleep Med. 2019;15:335-343.
  6. McEvoy RD, et al. CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med. 2016;375:919-931. doi:10.1056/NEJMoa1606599.

※この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。症状や検査結果に応じて医師へご相談ください。

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