• 10月 8, 2026

「脈が飛ぶ」「脈が速い」は大丈夫?―不整脈について知っておきたいこと

「突然、心臓がドキドキすることがある」

「脈が飛ぶ感じがして心配」

「健康診断の心電図で不整脈を指摘された」

診療では、このようなご相談をいただくことがあります。

「不整脈」という言葉を聞くと、「心臓が止まってしまうのではないか」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、不整脈にはさまざまな種類があり、健康な方にもみられ、治療を必要としないものから、脳梗塞や心不全、突然死につながる可能性があるものまで幅広く存在します。

そのため大切なのは、「不整脈があるかどうか」だけではなく、どの種類の不整脈なのか、症状があるのか、背景に心臓の病気がないかを確認することです。

今回は、不整脈の種類や症状、検査、治療について、できるだけわかりやすく解説します。

そもそも「不整脈」とは?

心臓は、全身に血液を送り出すポンプです。

このポンプを規則正しく動かしているのが、心臓の中を流れる「電気の信号」です。

心臓が規則正しく動く仕組み
① 洞結節 電気の信号を作る
② 心房 電気が心房へ広がる
③ 房室結節 電気を心室へ伝える
④ 心室 収縮して全身へ血液を送る
 
正常な脈:ほぼ一定の間隔で拍動します。
不整脈の一例:速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れたりします。

この電気の信号が通常とは異なる場所から発生したり、心臓の中を異常な経路で回り続けたり、電気の流れが途中で伝わりにくくなったりすると、不整脈が起こります。

不整脈は大きく分けると、

  • 脈が予定より早く出る「期外収縮」
  • 脈が速くなる「頻脈性不整脈」
  • 脈が遅くなる「徐脈性不整脈」

などがあります。

不整脈=すべて危険、ではありません

不整脈の中には健康な方でもみられるものがあります。一方で、種類によっては治療が必要です。「不整脈がある」という情報だけで判断せず、心電図などで種類を確認することが重要です。

不整脈ではどのような症状が出る?

不整脈の症状は、人によって大きく異なります。

代表的なのは、

  • 胸がドキドキする、バクバクする
  • 脈が速く感じる
  • 脈が飛ぶ、抜けるように感じる
  • 胸が一瞬「ドン」と強く打つ
  • 胸の違和感、不快感
  • 息切れ
  • めまい、ふらつき
  • 疲れやすい
  • 失神する

などです。

ただし、不整脈があってもまったく症状を感じない方もいます。

特に心房細動などは、健康診断や血圧測定、別の病気で心電図をとった際などに偶然発見されることがあります。

代表的な不整脈にはどんなものがある?

不整脈 特徴 主な症状 治療の必要性
期外収縮 予定より早いタイミングで心臓が収縮する 脈が飛ぶ、胸がドンとする 多くは経過観察。頻度や心臓の状態によって精査
心房細動 心房が細かく不規則に動き、脈が不規則になる 動悸、息切れ、疲労感。無症状の場合も 脳梗塞予防や心拍数・リズムの治療を検討
発作性上室性頻拍 突然脈が速くなり、突然止まることが多い 急な動悸、胸部不快感 症状に応じて薬物療法やカテーテルアブレーション
心房粗動 心房内を電気が規則的に旋回する 動悸、息切れ、疲労感 薬物療法、抗凝固療法、アブレーションなど
徐脈・房室ブロック 脈が遅くなったり、心房から心室へ電気が伝わりにくくなる ふらつき、息切れ、失神 程度や症状によってペースメーカーを検討
心室頻拍・心室細動 心室から発生する危険な頻脈 強い動悸、失神、意識消失、心停止 緊急治療が必要となる場合がある

1期外収縮

期外収縮は、本来の心拍よりも少し早いタイミングで余分な電気刺激が発生する不整脈です。

心房から発生するものを上室性期外収縮、心室から発生するものを心室性期外収縮と呼びます。

「脈が一回飛んだ」「胸がドンとする」と感じることがありますが、健康な方にもみられ、心臓に大きな異常がなく頻度も少ない場合には、治療を必要としないことも少なくありません。

睡眠不足、ストレス、疲労、アルコール、カフェインなどをきっかけに増えることもあります。

一方で、非常に頻度が多い心室性期外収縮では心臓の機能に影響することがあるため、ホルター心電図や心臓超音波検査などで評価することがあります。

2心房細動

心房細動は、不整脈の中でも特に重要なものの一つです。

本来は規則正しく収縮している心房が細かく震えるような状態になり、脈が「バラバラに不規則」になります。

動悸、息切れ、疲れやすさなどを感じる場合がありますが、症状がないこともあります。

心房細動で大切なのは「脳梗塞」の予防です

心房細動になると、心房の中で血液がよどみ、血栓ができることがあります。その血栓が血流に乗って脳の血管を詰まらせると、脳梗塞を起こします。そのため、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、過去の脳梗塞などをもとに脳梗塞のリスクを評価し、必要に応じて血液を固まりにくくする「抗凝固薬」を使用します。

心房細動の治療は、単に不整脈を止めるだけではありません。

大きく、

  • 脳梗塞を予防する
  • 速すぎる心拍数を調整する
  • 可能な場合には正常なリズムを維持する
  • 高血圧、肥満、睡眠時無呼吸、飲酒などの関連因子を整える

という複数の視点から治療を行います。

3発作性上室性頻拍

「さっきまで普通だったのに、突然心臓がものすごい速さでドキドキし始めた」という場合にみられる代表的な不整脈です。

心臓の中に電気がぐるぐる回る回路ができることなどによって起こり、突然始まり、突然正常な脈に戻ることが特徴です。

発作を繰り返す場合には、薬物療法だけでなく、原因となっている電気回路をカテーテルで治療するカテーテルアブレーションによって根治を目指せる場合があります。

4徐脈性不整脈

不整脈というと「脈が速くなる病気」をイメージするかもしれませんが、反対に脈が異常に遅くなる不整脈もあります。

代表的なものが洞不全症候群や房室ブロックです。

心拍数が十分に上がらなくなることで、

  • めまい
  • ふらつき
  • 息切れ
  • 強い倦怠感
  • 失神

などが起こることがあります。

症状のある高度な徐脈などでは、必要に応じてペースメーカーによる治療を行います。

5心室頻拍・心室細動

心室頻拍や心室細動は、心臓の中でも全身へ血液を送り出す「心室」から生じる不整脈です。

特に心室細動では、心室が正常に収縮できなくなり、全身へ血液を送り出せなくなるため、心停止につながります。

心筋梗塞、心筋症など心臓そのものに病気がある方では、このような危険な不整脈のリスクが高くなることがあります。

このような症状では早急な受診が必要です
  • 動悸とともに意識を失った
  • 強い胸痛や呼吸困難を伴う
  • 突然倒れた、呼びかけに反応しない
  • 動悸とともに強いめまいや冷汗がある
  • これまで経験したことのない強い症状が突然起こった

特に、意識がなく正常な呼吸がない場合には、周囲の方は119番通報を行い、AEDがあれば使用することが重要です。

不整脈はなぜ起こる?

不整脈の原因は一つではありません。

心臓そのものの病気が原因になることもあれば、心臓以外の要因によって起こることもあります。

例えば、

  • 加齢
  • 高血圧
  • 心筋梗塞や狭心症
  • 心不全
  • 心臓弁膜症
  • 心筋症
  • 甲状腺機能異常
  • 貧血
  • 電解質異常
  • 発熱や脱水
  • 睡眠不足
  • 精神的ストレス
  • 飲酒
  • カフェイン
  • 一部の薬剤
  • 睡眠時無呼吸症候群

などが不整脈に関係することがあります。

そのため、不整脈を診療するときには、心電図だけではなく、背景に別の病気が隠れていないか確認することも重要です。

不整脈はどのように診断する?

不整脈診断の最大のポイントは「症状が出ている瞬間の心電図」です

診察室に来たときには症状が治まっていることも多いため、通常の心電図だけで診断できない場合には、長時間心電図などを組み合わせます。

① 12誘導心電図

不整脈を調べる基本となる検査です。

胸や手足に電極をつけ、心臓の電気活動を記録します。

検査をしている時点で不整脈が出ていれば、その種類を診断できることがあります。

② ホルター心電図

通常の心電図は数十秒程度の記録であるため、たまにしか起こらない不整脈は見つからないことがあります。

そこで役立つのがホルター心電図です。

小型の心電計を装着して日常生活を送りながら長時間心電図を記録することで、

  • 一日のうち何回不整脈が起きているか
  • 動悸を感じた時間にどのような不整脈が出ていたか
  • 睡眠中に徐脈が起きていないか
  • 心房細動などが断続的に出ていないか

などを評価できます。

症状の頻度によっては、より長期間記録できる心電計を使用することもあります。

③ 心臓超音波検査(心エコー)

不整脈の背景に心臓の病気がないかを確認する検査です。

心臓の動き、大きさ、弁の状態、心臓のポンプ機能などを超音波で調べます。

④ 血液検査

甲状腺機能異常、貧血、電解質異常、腎機能など、不整脈に関係する原因や治療上重要な項目を確認します。

⑤ その他の検査

患者さんの状態に応じて、

  • 運動負荷心電図
  • 冠動脈CTなどの画像検査
  • 心臓MRI
  • 電気生理学的検査

などを行うことがあります。

スマートウォッチで不整脈はわかる?

近年では、スマートウォッチや家庭用の携帯型心電計をきっかけに不整脈が見つかることも増えています。

特に心房細動などを発見するきっかけとして役立つことがあります。

一方で、スマートウォッチの通知だけで不整脈の種類を確定できるとは限りません。

期外収縮などを心房細動として判定したり、記録状態によって正確に判定できなかったりすることもあります。

心電図の記録が残っていれば診察時に見せてください

動悸があるときにスマートウォッチや携帯型心電計で記録できた心電図は、診断の手がかりになることがあります。症状が起きた日時と一緒に残しておくと役立ちます。

不整脈はどのように治療する?

不整脈の治療は、その種類によって大きく異なります。

「不整脈があるから全員が薬を飲む」というわけではありません。

① 経過観察・生活習慣の改善

心臓に大きな異常がなく、危険性の低い期外収縮などでは、薬を使わず経過をみることがあります。

睡眠不足、過度な飲酒、ストレスなどが影響している場合には、生活習慣を整えることで症状が軽くなることもあります。

② 薬物療法

不整脈の種類に応じて、

  • 心拍数を調整する薬
  • 正常なリズムを維持するための抗不整脈薬
  • 心房細動による脳梗塞を予防する抗凝固薬

などを使用します。

抗不整脈薬には、それぞれ使用に適した患者さんと注意が必要な患者さんがいます。心臓の機能、腎機能、ほかに服用している薬などを考慮して選択します。

③ 電気的カルディオバージョン

心房細動などの不整脈に対して、胸から短時間の電気刺激を与えて正常なリズムへ戻す治療です。

患者さんの状態や不整脈が続いている期間などによっては、血栓がないことの確認や、事前の抗凝固療法が必要になります。

④ カテーテルアブレーション

足の付け根などの血管から細いカテーテルを心臓まで進め、不整脈の原因となっている電気の異常な発生源や回路を治療する方法です。

代表的な対象として、

  • 発作性上室性頻拍
  • 心房粗動
  • 心房細動
  • 一部の心室性期外収縮・心室頻拍

などがあります。

近年は技術が進歩し、特に心房細動では、薬物治療を行ってからアブレーションを検討するだけでなく、患者さんによっては治療の比較的早い段階からアブレーションを選択することもあります。

⑤ ペースメーカー

洞不全症候群や高度な房室ブロックなどによって必要な心拍数を保てない場合には、ペースメーカーを使用することがあります。

ペースメーカーは心臓の動きを監視し、必要なときに電気刺激を送ることで、心拍数が遅くなりすぎるのを防ぎます。

⑥ 植込み型除細動器(ICD)

生命にかかわる心室頻拍や心室細動を起こす危険性が高い方では、植込み型除細動器(ICD)を検討することがあります。

ICDは危険な不整脈を監視し、必要に応じて電気治療を行うことで突然死を予防するための機器です。

心房細動の治療は以前より変わってきています

心房細動の治療では以前から、

  • 脳梗塞予防
  • 心拍数のコントロール
  • 症状が強い場合の正常なリズムへの回復

が重要とされてきました。

近年はそれに加えて、発症して比較的早い段階から正常なリズムを維持する「早期リズムコントロール」の重要性が注目されています。

大規模臨床試験であるEAST-AFNET 4では、心房細動と診断されてから比較的早期の患者さんに対して、抗不整脈薬やカテーテルアブレーションなどによるリズムコントロールを早くから行った群で、心血管死・脳卒中・心不全などによる入院を含む心血管イベントが少なかったことが報告されました。

こうした研究結果を背景に、現在は、

現在の心房細動治療で考える4つのポイント
① 背景を整える
高血圧・肥満・睡眠時無呼吸・飲酒など
② 脳梗塞予防
必要に応じて抗凝固薬
③ 症状を改善
心拍数調整・正常なリズムの維持
④ 定期的に再評価
年齢や病状の変化に合わせ治療を見直す

というように、心房細動を全身の病気として総合的に管理していくことが重要になっています。

カテーテルアブレーションはどんな場合に行う?

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、以前より治療成績が向上し、適応も広がっています。

特に、動悸などの症状がある発作性心房細動では、薬物療法で十分な効果が得られない場合だけでなく、患者さんの年齢、心房細動の状態、希望などによっては、初期治療の選択肢として検討されることがあります。

また、心房細動が原因となって心臓の機能が低下していると考えられる場合や、一部の心不全患者さんでは、アブレーションによって心機能や予後の改善が期待できることがあります。

ただし、アブレーションを行えば必ず心房細動が完全に治るというわけではありません。

心房細動の持続期間、左心房の大きさ、年齢、基礎疾患などによって再発率は異なり、複数回の治療が必要になる場合もあります。

また、アブレーション後に正常なリズムが維持できていても、脳梗塞のリスクによっては抗凝固薬を継続する必要があります。

「動悸=不整脈」とは限りません

動悸を感じて受診したものの、心電図を詳しく調べると不整脈が起きていないこともあります。

例えば、

  • 緊張や不安
  • 発熱
  • 脱水
  • 貧血
  • 甲状腺機能亢進症
  • 低血糖
  • 自律神経の乱れ

などによって正常な心拍が速くなり、それを「動悸」と感じることがあります。

反対に、不整脈が起きていても本人にはまったく自覚症状がない場合もあります。

そのため、症状だけから不整脈の有無や種類を判断することは難しく、心電図で確認することが重要です。

不整脈を疑ったら、症状の状況を覚えておきましょう

受診時には、

  • いつ起こったか
  • 突然始まったか、徐々に始まったか
  • どのくらい続いたか
  • 突然止まったか
  • 脈は規則正しかったか、バラバラだったか
  • 胸痛、息切れ、めまい、失神を伴ったか
  • 運動中だったか、安静時だったか
  • 飲酒や睡眠不足との関係がありそうか

などの情報が診断の手がかりになります。

脈を触ってみることも診断のヒントになります

動悸が起きたときに、可能であれば手首で脈を触れ、

  • かなり速いのか
  • 規則正しいのか
  • バラバラなのか

を確認しておくと、診察時に役立つことがあります。無理に測定する必要はありません。

不整脈で気になる症状があればご相談ください

不整脈には、治療を必要としないものから、脳梗塞や心不全、突然死につながる可能性のあるものまで、さまざまな種類があります。

「脈が飛ぶから危険」「症状がないから大丈夫」と一律に判断することはできません。

大切なのは、どのような不整脈が、どのくらい起こっているのかを確認し、その背景に心臓の病気がないかを調べることです。

当院では、問診や診察、12誘導心電図などを行い、必要に応じて長時間心電図検査や心臓超音波検査などを組み合わせながら、不整脈の種類や原因を評価します。

また、高血圧、糖尿病、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群などは、心房細動をはじめとする不整脈や心血管疾患と関連します。

不整脈だけを見るのではなく、血圧や生活習慣、心臓の状態なども含め、一人ひとりに適した治療方針を考えていくことが大切です。

「最近、脈が飛ぶ感じがする」
「突然ドキドキすることがある」
「健康診断で不整脈を指摘された」
「スマートウォッチで心房細動の通知が出た」

このような症状や指摘がありましたら、診察時にお気軽にご相談ください。

まとめ
  • 不整脈には、心配の少ないものから治療が必要なものまでさまざまな種類があります。
  • 動悸、脈が飛ぶ感じ、息切れ、めまいなどが代表的な症状ですが、無症状の場合もあります。
  • 診断には「症状が起きているときの心電図」が非常に重要です。
  • 必要に応じてホルター心電図や心臓超音波検査などを行います。
  • 心房細動では、不整脈そのものの治療だけでなく脳梗塞予防が重要です。
  • 近年は心房細動に対する早期のリズムコントロールやカテーテルアブレーションの重要性も高まっています。
  • 失神、強い胸痛、呼吸困難、意識消失などを伴う場合には、早急な対応が必要です。

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。不整脈の種類や重症度、必要な検査・治療は患者さんによって異なります。実際の診断・治療については医療機関でご相談ください。強い胸痛、呼吸困難、失神、意識障害などがある場合には、緊急性のある病気の可能性があるため、速やかに救急要請を含めた対応をご検討ください。

主な参考ガイドライン・文献
  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
  2. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
  3. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:不整脈薬物治療ガイドライン
  4. European Society of Cardiology: 2024 ESC Guidelines for the Management of Atrial Fibrillation
  5. European Society of Cardiology: 2022 ESC Guidelines for the Management of Ventricular Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death
  6. Kirchhof P, et al. Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2020.
  7. Marrouche NF, et al. Catheter Ablation for Atrial Fibrillation with Heart Failure. N Engl J Med. 2018.

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