• 10月 6, 2026

心不全について―症状・診断・治療をわかりやすく解説|内科・循環器内科

こんな症状ありませんか?

  • 歩いたり、階段や坂道を上ったりすると息切れする
  • 横になると息苦しく、枕を高くすると楽になる
  • 足の甲やすねがむくむ、体重が急に増えた
  • 以前より疲れやすく、外出や家事がつらくなった
  • 夜中に息苦しくて目が覚める

このような症状は心不全でみられることがあります。心臓以外の病気でも起こるため、症状だけで判断せず、医療機関で原因を調べることが大切です。

「最近、少し動いただけで息が切れる」
「夕方になると足がむくむ」
「横になると苦しくて、上半身を起こして眠る」

こうした変化は、心臓の働きが弱っているサインかもしれません。

心不全は、心臓の働きが低下することで、息切れやむくみ、疲れやすさなどが現れる状態です。高齢の方に限らず、心筋梗塞、高血圧、心臓弁膜症、不整脈などをきっかけに、さまざまな年代で起こります。

今回は、心不全の症状、診断、治療、日常生活で気をつけたいことについて、一般の方向けに解説します。

急な息苦しさや胸の痛みは、救急車を呼んでください

安静にしていても強く息苦しい、急に症状が悪化した、胸の痛み・冷や汗・意識が遠のく感じを伴う場合は、急性心不全や心筋梗塞などの可能性があります。様子を見たり、ご自身で運転して受診したりせず、119番に連絡してください。

心不全とは

心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。心不全とは、心臓のポンプ機能や、血液を受け入れて送り出す働きに問題が起こり、体に必要な血液を十分に送れなくなったり、血液や水分が肺・全身に滞ったりする状態です。

「心不全」という名前から「心臓が止まる病気」と思われることがありますが、心停止と同じ意味ではありません。また、心不全は一つの原因だけで起こる病気ではなく、さまざまな心臓の病気などによって生じる状態の総称です。

心不全は、症状が落ち着いている時期と、息切れやむくみが強くなる時期を繰り返すことがあります。症状が軽くなっても、原因となった病気や心臓の状態に応じた治療と定期的な確認が大切です。

心臓の働きが低下すると、体に次のような変化が起こります

心臓のポンプ機能・血液を受け入れる働きが低下

▼

肺に血液が滞る

息切れ・呼吸困難

全身に水分が滞る

足のむくみ・体重増加

全身への血流が不足する

疲れやすさ・活動量の低下

心不全ではどのような症状が出る?

心不全では、肺や全身に水分がたまる「うっ血」や、全身に送られる血液が不足することによって、次のような症状が起こります。

  • 歩行、階段、坂道などで息切れする
  • 横になると息苦しく、座ると楽になる
  • 夜中に息苦しくて目が覚める
  • 足の甲やすねがむくむ
  • 数日で体重が増える
  • 疲れやすい、動悸がする、以前より動けなくなる
  • 食欲が落ちる、尿量が減る

症状の現れ方には個人差があります。高齢の方では、はっきりした息切れよりも、食欲や活動量の低下、ぼんやりするなどの変化が目立つこともあります。いつもと違う変化が続く場合は、早めにご相談ください。

心不全の原因にはどのようなものがある?

心不全の背景には、さまざまな心臓や全身の病気があります。主な原因には、次のようなものがあります。

  • 心筋梗塞や狭心症など、心臓の血管の病気
  • 高血圧
  • 心臓弁膜症
  • 心房細動などの不整脈
  • 心筋症や心筋炎
  • 糖尿病、慢性腎臓病、肥満など

原因によって有効な治療が異なるため、心不全と診断された場合は、症状を和らげるだけでなく、背景にある病気を調べて治療することが重要です。

心不全にはいくつかのタイプがあります

心臓超音波検査では、左心室が血液を送り出す力を「左室駆出率(LVEF)」として評価します。心不全の分類はガイドラインの版によって異なります。日本の2025年版では従来の3分類を用い、2026年ESCガイドラインでは分類が2つに整理されました。

左室駆出率(LVEF)日本の2025 JCS/JHFS版ESC 2026年版
40%以下HFrEFHFrEF
41〜49%HFmrEFHFrEF(独立区分は設けない)
50%以上HFpEFHFpEF

※日本の2025年版ガイドラインではLVEF 41〜49%をHFmrEFと分類します。一方、ESC 2026年版ではHFmrEFを独立区分から外し、LVEF 50%未満をHFrEFにまとめています。どの分類でも、LVEFだけで心不全かどうかが決まるわけではありません。症状、診察所見、血液検査、心臓超音波検査などを合わせて判断します。

心不全はどのように診断する?

息切れやむくみの原因は、肺の病気、貧血、腎臓の病気など、心不全以外にもあります。症状や診察所見に加えて、複数の検査を組み合わせて診断します。

① 問診・診察

息切れが出る場面、横になると苦しくなるか、むくみや体重の変化、これまでの心臓病や高血圧などを確認します。血圧・脈拍、首の血管の張り、肺の音、足のむくみなども診察します。

② 血液検査(BNP・NT-proBNPなど)

BNPやNT-proBNPは、心臓に負担がかかると血液中で増える物質です。慢性の心不全が疑われる場合の目安の一つとして、BNP 35 pg/mL以上、またはNT-proBNP 125 pg/mL以上では、心不全の可能性を考えて追加の評価を行うことがあります。[2]

ただし、この数値だけで心不全の診断が確定するわけではありません。年齢、腎機能、心房細動などの影響で高くなることがあり、肥満などでは心不全があっても低めになることがあります。症状や心臓超音波検査などと合わせて判断します。[2]

③ 心電図・胸部X線検査

心電図では不整脈や心筋梗塞の痕跡などを調べます。胸部X線検査では、心臓の大きさや肺に水分がたまっていないかを確認します。これらの検査だけで心不全を否定できるとは限らず、ほかの検査も組み合わせます。

④ 心臓超音波検査

心臓超音波検査(心エコー)は、心臓の大きさや動き、弁の状態、左室駆出率などを確認する検査です。心不全の有無だけでなく、原因やタイプを調べ、治療方針を決めるうえで重要です。必要に応じて、CTやMRI、運動負荷検査、冠動脈の検査などを行います。[1]

心不全の治療

心不全の治療では、息切れやむくみを和らげることに加えて、心不全の悪化や入院を防ぎ、原因となる病気を治療することを目指します。心臓のタイプ、血圧、脈拍、腎機能、血液中のカリウム値などに応じて治療を選びます。[1][3]

① 駆出率が低下した心不全(国内分類のHFrEF)の薬物療法

左室駆出率が低下した心不全では、心臓を保護し、心不全の悪化や入院、死亡のリスクを減らすことを目指して、作用の異なる薬を組み合わせて治療します。代表的な薬には、次のようなものがあります。

  • 心臓を保護する薬(ARNI、ACE阻害薬、ARBのいずれか):血管や心臓にかかる負担を軽くします。
  • β遮断薬(ベータ遮断薬):心臓を過剰に働かせる作用を抑え、心臓を保護します。
  • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA):塩分や水分をためるホルモンの働きを抑えます。腎機能やカリウム値を確認しながら使います。
  • SGLT2阻害薬:糖尿病の薬として開発されましたが、心不全の悪化を抑える効果も確認され、糖尿病の有無にかかわらず使われることがあります。

これらは心不全治療の基本となる薬ですが、すべての方に同じ薬を同じ量で使うわけではありません。血圧や腎機能、脈拍などを確認しながら、少量から開始して調整することがあります。[1][3]

② 駆出率が保たれた心不全などの治療

左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)でも治療の選択肢が増えています。大規模臨床試験では、SGLT2阻害薬が心不全の悪化や入院を減らす効果を示し、国内の2025年改訂版ガイドラインでもHFpEFの治療選択肢に位置づけられています。LVEF 41〜49%の方は日本の同ガイドラインではHFmrEF、ESC 2026年版ではHFrEFに分類されますが、分類名だけで治療が決まるわけではありません。症状や腎機能、併存疾患などを踏まえて治療を選びます。[1][3][4][5][6]

高血圧、心房細動、糖尿病、慢性腎臓病、肥満、心臓弁膜症など、併存する病気の管理も大切です。症状や原因に応じて、利尿薬、脈を整える治療、弁膜症や冠動脈の治療などを組み合わせます。

③ 利尿薬で余分な水分を減らす

むくみや肺のうっ血がある場合は、尿の量を増やして体内の余分な水分を減らす利尿薬を使うことがあります。息切れやむくみを和らげるために重要な薬ですが、量を調整する際には腎機能や電解質を確認します。

心不全の原因や状態によっては、カテーテル治療、心臓弁の治療、ペースメーカーなどの機器による治療を検討することもあります。治療方法は検査結果をもとに個別に決めます。

心不全と付き合うために日常生活で気をつけること

  • 体重を定期的に確認する:急な体重増加やむくみの悪化は、体に水分がたまっているサインのことがあります。
  • 塩分のとりすぎに注意する:食事の塩分量は、心臓や腎臓の状態に合わせて医師と相談しましょう。
  • 水分制限は自己判断で行わない:水分をどの程度とるかは、病状や治療内容によって異なります。
  • 無理のない運動を続ける:病状が安定している方では、運動や心臓リハビリテーションが役立つことがあります。安全な運動量を主治医に確認しましょう。
  • 血圧・血糖・コレステロールを管理する:禁煙も含め、心臓に負担をかける要因を減らすことが大切です。

痛み止めなどの市販薬の中には、心不全を悪化させることがある薬もあります。新しい薬を使うときは、医師や薬剤師に心不全の治療中であることを伝えてください。

心不全の薬は自己判断で中止しないでください

息切れやむくみが改善すると、「薬をやめてもよいのでは」と思うことがあるかもしれません。しかし、症状が落ち着いているのは治療が効いているため、という場合があります。

薬を自己判断で中止・減量すると、心不全が再び悪化することがあります。一方で、腎機能や血圧などに応じて薬を調整することもあります。薬の変更は、必ず主治医に相談してください。

息切れやむくみが気になる方はご相談ください

心不全は、早く気づいて原因を調べ、状態に合った治療を続けることが大切です。息切れ、足のむくみ、急な体重増加、疲れやすさなどが続く場合は、年齢のせいと決めつけずにご相談ください。

当院では、症状や診察所見に加え、必要に応じて心電図、胸部X線、心臓超音波検査、血液検査などを行い、心不全やその原因を評価します。さらに詳しい検査や入院治療が必要な場合には、適切な医療機関と連携して対応します。

心不全の症状や治療、現在服用しているお薬について気になることがありましたら、診察時にお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の診断や治療は、患者さんの症状、検査結果、持病などによって異なります。強い息苦しさ、胸の痛み、意識が遠のくなどの症状がある場合は、早急に救急医療を利用してください。

参考資料

  1. 日本循環器学会・日本心不全学会合同「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」
  2. 日本心不全学会「血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント 2023年改訂版」
  3. European Society of Cardiology「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」
  4. DAPA-HF試験(HFrEFに対するダパグリフロジン)
  5. EMPEROR-Preserved試験(HFpEFに対するエンパグリフロジン)
  6. DELIVER試験(LVEF 40%超の心不全に対するダパグリフロジン)
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